AlexaスキルLearning Dayに行って来た。
何の話かと言うと
- Amazonが開催するAlexaスキルLearning Dayというイベントの参加レポート。
- 個人的に印象に残ったセッションについて詳細と感想を書いています。
- 結論として、ものすごい情報量、ものすごく示唆に富む、楽しくて勉強になるイベントでした。
イベント概要
公式サイトのイベント概要から引用
Alexaスキル開発をご検討されている企業様や開発者様、また企画やデザインをご担当される方を対象に、Alexaスキルの最新情報や機能をご紹介する1 Dayイベントです。米国からのスピーカーによる先進事例の紹介や、実際にAlexaスキルを公開されている企業様のゲストトークもご用意しております。
アジェンダ
- 9:15 :受付開始
- 10:00:キーノートセッション
- 10:45:テクニカルアップデート
- 11:35:ゲストトーク「カスタマーに愛されるスキルの作り方とスキル内課金でのビジネスの作り方」
- 12:00 :Alexaを使ったゲーム開発のための最新機能&事例紹介
- 12:20 :ランチ
- 13:00:ゲストトーク「キッチンで日常的に使ってもらえるスキルを作るために」
- 13:20:ゲストトーク「Amazon Alexa Developer Skill Award 2019最優秀賞トーク」
- 13:45:ゲストトーク「Alexa Web API for Games 事例: 政宗の部屋」
- 14:10:「Alexaを組み合わせた新たな体験の開発とデザイン - St.Noire開発について」
- 14:55:VUI初心者のためのAlexaワークショップ+Hello World
参加した動機と私自身のバックグラウンドについて
私は現在BPOのコンタクトセンター事業者に所属していて、Amazon ConnectとAmazon Lexをつかった音声・テキストBotの導入などを検証しています。Amazon LexはAlexaと同一の自然言語処理エンジンを使っており、仕組み的にはAlexaと非常に似通っている部分が多いのですが、現状は米国英語にしか対応していません。Lexの日本語化が待ちきれないので、Alexaの方も触ってみようと考えて参加しました。
私のAlexaのスキルは最近ようやく初歩的なHello World的なスキルを作成して動かしてみた程度で、完全な初心者です。AWS Lambdaなどは普段からよく使っているので、少しずつスキル開発を習得していこうと思っています。
いざ会場入り
会場入りすると座席には資料が。ここには『Alexaデザインガイド』という冊子が配布されていました。この冊子ではAlexaスキルを開発する上での基本コンセプトの解説から、自然なスキルにするためのベストプラクティスやスタイルガイドなど、とても役に立つ内容が満載です。オンライン版ではAlexaデザインガイドに最新版があるそうです。
セッションレポート
ここからは印象に残ったセッションの内容と感想について記載します。
キーノート
- アマゾンジャパン合同会社アレクサ ビジネス本部 本部長 - 柳田 晃嗣 - 2019年に発表されたAlexaスキル機能の最新情報やAmazon Echoシリーズ、そしてAlexa Everywhereとしての展望などをご紹介します。
Then to now
Amazonのミッション
「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」をこれまで愚直に進めてきました。
コンピュータの発展の歴史 - キャラクターベース - GUIで簡単に操作できるように - Webの登場で広く一般の人が様々な情報を手にできる様に。GoogleやYahooの誕生 - モバイルの登場でいつでもインターネット接続されている生活が生まれた。
すべてのニーズは満たせてきたのかというと、日常生活ではこれらのデバイスがまだ使いにくい場面があります。 寒い冬の朝に布団の中にいて、PCやスマホで何かするのはちょっと面倒。このままの状態で何か操作できたら。洗い物中、運転中、赤ちゃんの世話をしている時。何かをしながらデバイス操作も無しにやりたいことができたら。
本当に簡単なインターフェイスはないんだろうか。VUIはここから生まれました。音声ならではのユーザー体験が生まれています。
Alexa Everywhere
"Alexa Everywhere"というのがAmazonのコンセプトで、Alexaがどこでも利用できる、Alexaが用意されている場所にいけば、誰もが利用できる。そんな世界を目指したいという思想。Alexaは現在15言語に対応しており、80カ国以上で利用されています。
- Echo 2017年
- 日本で招待性と言う形で発売。Echo、EchoPlus、EchoDot。
- 2018年
- ディスプレイ付きのEchoSpot、EchoShow、FireTVStick、EchoPlus(G2)、EchoDot(G3)
- 2019年
- 画像参照
- for US
- Echo Buds, Echo Loop(Day1 Edition)
Alexa APIs
- Alexa Voice Services
- Alexa Skill Kit(3000+)
New Feature
- 定型アクション
- 覚えやすいフレーズでAlexaスキルを自動化
- "Alexaおはよう"だけで複数の処理を起動したりする
- 毎日決めた時刻でAlexaスキルを起動
- PM3:00に自動でラジオを流すなど
- 3000を超えるスキルをここで使える
- Flexと合わせてモーションセンサーを使うと、時刻指定で、路線の運航状況や天気を話させることができる
- スキルの収益化
- スキル内課金
- 1 time / subscription
- 収益化しているスキル100+
- パーソナライズ
- 音声プロフィール機能
- 家族がそれぞれの星占いをする
- 声で識別して誰が使っているかを識別する
- Web API For Games
- Web技術を使った画面つきのマルチモーダルスキルを作れる
- 政宗の部屋 by サイバード
二つの暖炉ーDreamerとBuilder
ジェフ・ベゾスは家に2つの暖炉を作っていて、1つは"Dreamer"、もう1つは"Builder"と名付けたそうです。
世の中はまずDreamerが現れてこんなすごい世界を実現したいと発言します。それを聞いたBuilderはどうやってそれを実現するかを考えて具体的な形で実現する。これを繰り返して世界を作り上げていくのです。DreamerとBuilderは別々の人に分かれているのではありません。一人の同一の人間のなかにDreamerとBuilderが居るのです。
みなさんはどんな世界を作りたいでしょうか。どんな夢を描くのか。その夢にAlexaはどんな形で助力ができるでしょうか。私たちはみんな、誰もがDreamerでBuilder。豊かで優しくて便利な世界を実現しましょう。"Make it so”でそれを成し遂げていきましょう。
感想
Alexaの誕生の背景から、全体的な状況の俯瞰的な説明、Echoデバイスの広がり、API群や新機能の説明と非常にコンパクトでわかりやすい形でAlexaの現在を掴むことができました。そして畳みかける様に語られる、Amazonが実現したいビジョン。2つの暖炉の話からの、超絶にエモいDreamerとBuilderのはなし。初っ端のキーノートにして胸に込み上げてくるものがあるという、素晴らしいキーノートでした。
テクニカルアップデート
アレクサビジネス本部 シニアソリューションアーキテクト 松井 佑馬 Amazon.com アレクサスキルシニアプロダクトマネージャー アルーン・シン 2019年に発表された、Alexaスキル関連の最新機能を事例を含めてご紹介いたします。また、Amazonシアトル本社のAlexaスキルプロダクトマネージャーより「Alexa Presentation Language」の開発背景、最新機能について紹介します。
Alexaスキル
- 2019年の振り返り
感想
2019年に入って、ディスプレイ付きEchoデバイスへの対応や連携ガジェットなども増えて、機能面でもアップデートが続いていることが理解できました。
ゲストトーク「カスタマーに愛されるスキルの作り方とスキル内課金でのビジネスの作り方」
- nvoked Apps - ニック・シュワブ様 - Invoked AppsのファウンダーでありAlexa Championでもあるシュワブ様に、スキル内課金をアメリカでリリースされた2018年から導入されている、ユーザーに長く支持されるスキルの開発やスキル内課金でのポイントなどをお話いただきます。
登壇者のバックグラウンド
Alexa Championでもあり、これまで50+のスキルをリリースした。
- 元々はFull StackのWeb開発者
- 保険会社
- いくつかのスタートアップ
- 私の強み
- バックエンド開発
- システムのアーキテクティング
- 私の弱み
- ビジュアルのデザイン
- フロントエンド開発
VUIならば自身のバックグランドから強みを生かせるし、弱みが問題にならないと考えた。
転機
- 2016年に勤めていたスタートアップをクビになってしまった
- 自由な時間がたくさんできてしまった
その頃からスキル開発をしていった。
最初のスキル
- Skill: Bargain Buddy Mar 2016
- バーゲン情報を知らせるスキルを開発した
次につくったスキル
- Skill: Opening Bell Apr 2016
- 株価を知らせてくれるスキル
- Freeの株価APIを探して作った
- ただ、「Netflix」を「NFX」って言ってしまうなど不自然な点もあった
- とは言え、はじめてのスキルに比べれば相当の進歩した
その後新しい職を得て、引っ越しもした。
- 一つ上の階にも新しい人が引っ越して来ていた
- 犬もうるさくて、朝5時に起こされる羽目に
- 雨の音の様な、安眠の為の環境音のスキルを作った
そして次に作ったスキルがこれ。
- Skill: Rain sound Oct, 2016
- 45+の音をリリースした
- 今では数百万人のリスナーが居る。
- 月間に2億5000万回のLambda実行数
- 4 petabytes の音声ストリーム量が毎月ある
どうして人気を博することができたんだろう
- 問題を解決してくれるスキルであること
- 習慣的に利用されるスキルだった (当初はそんな風に思ってなかったが)
- シンプルな利用方法
- start / stop
- loop on / off
- わかりやすいネーミング
- 何ができるかが名前だけでめちゃくちゃ明白
- 動作に信頼性がある
- 色んなデバイスに最適化する
- 利用の15%はディスプレイ付きのデバイスだった
customer feedback
- 1時間ごとにポーズするのが嫌だ
- 寄せられる要望
- 雨と波の音が欲しい
- 雨と風の音が欲しい
- コーロギとカエルの声を入れて欲しい
- 雨の音がベーコンを焼く音みたい
これらのフィードバックからモチベーションを得て、丁寧な改善をしていった。
お金もかかって来たので、課金で運用代を稼ぎたいと思った
開発者からビジネスマンに頭をスイッチして、課金のパターンについて考えた。
- 消費型のスキル
- ショートカットやヒントを買うなど
- 買い切り型
- 拡張パック
- 新機能が有効化される
- サブスクリプション
- 月単位、年単位でのサブスクリプション
- 値付けについて
- 1 cent / monthの計算がたった
- 2%の顧客が購入してくれた
- 大事なポイント
- 無償で利用できる部分は無くさない
- ファネルを考える
- どのお客さんに買ってもらうのか
- ある程度使ってもらっているユーザーにアップセルする形にした
- 3回使ってもらっているユーザーを対象にした
- ソフトに勧奨して断られたらしつこくしない様にした
- フリートライアルを用意した
- でも実際には9割のユーザーはそのまま課金してくれた
そして夢だったTeslaを買うことができた
感想
とにかくニックの話は興味深くユーモアにあふれて面白くためになる話でした。愛されるスキルにしていくための心得や、課金についての考え方はだれもが参考になる話だったと思います。フィードバックからモチベーションを受けて、地道に改善していく素敵な発表でした。
ランチ
会場でお弁当とお茶が配られました。ありがたや。
ゲストトーク「キッチンで日常的に使ってもらえるスキルを作るために」
- クックパッド株式会社 - 研究開発部 山田 良明様 2017年のAlexa日本リリース時より、調理中の手が離せないタイミングでも声でレシピを検索、確認できる「クックパッド」スキルをご提供いただいているクックパッド株式会社様。 これまでにスペイン、メキシコ、そしてアメリカの3か国でスペイン語での同スキルも提供されるなど、新しい取り組みを続けていただいています。 - 研究開発部の山田様にスキルを開発する上で取り組まれたことや直近のアップデートについてお話しいただきます。
クックパッドのAlexaスキル
- 声で料理の作り方を聞くことができる。
- 知っているレシピをすぐに呼び出すことができる。
- 今作っている料理の特定部分について聞くことができる。
なぜAlexaスキルに注目したか
- スマートスピーカーはリビング、寝室、キッチンに置かれることが多い
- Amazon Echoが日本に来た2016年からスキル開発をしている
- 当初は使いたい食材から料理のレシピのアイディアを出すスキルを考えていた
- 当時はスクリーン付きのデバイスがなかったので、スマホにPush通知を送っていた
今から料理を作ろうとしているユーザーに対して、声だけで作り方をナビするのは難しいだろうと考えた。
スマートホーム家電との連携もやってきた
- しょうゆを大さじ1出してなどの発話に対応
- VUIなら複雑になってしまう指示を簡単にだせることが示された
- 三杯酢を出して、照り焼きのたれを作ってなどの複雑な処理が簡単な表現になる
グローバル展開
- スペイン、メキシコ、アメリカでスペイン語のスキルとして展開した
- 日本と同じ機能やインタラクションで問題が出る懸念があり、現地ユーザーテストをした
- 日本では材料名で検索するが、スペインでは材料+料理名で検索が多い
- VUIのデザインは国ごとに異なる言い回しを理解することが重要
- 確認すべきこと
- どのように話しかけるのか
- スピーカーからの返答は正しくガイドできているのか
- スピーカーからの発話の内容は多すぎないか、少なすぎないか
- 言語によって聞いていられる量が変わる
- どのように話しかけるのか
感想
クックパッドさんのレシピスキルのはなし。グローバルに展開する場合の言い方の違いに注目する方法や、事前のユーザーテストの手法など、非常に深く実践されている方ならではのお話でした。
まとめと感想
キーノートからしてものすごい情報量と、示唆に富む素晴らしい内容で圧倒されました。2つの暖炉 - DreamerとBuilderの話などとても感動的な幕開けから、Alexaの最新機能リリースのラップアップ、そして、Alexaスキル開発者の皆さんのナレッジに富む貴重なお話。楽しくて、示唆に富み、勉強になるイベントでした。
本日はこの後、スキル開発のハンズオンも用意されているので、最後に手を動かしてスキル開発をブーストしていきたいと思います。参加して本当によかったです。次回また開催される様なら、すべての人にお勧めしたい素晴らしいラーニング・イベントだったと思います。